本を読んだら・・・

読んだ本を紹介します。

ブラック部活動  

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内田 良(著)   東洋館出版社(2017)

 

「部活がしんどい、やめたい」「もっと休みがほしい」「なぜ全員強制なのか?」「授業に向き合う余裕がない」・・・・・日本の中学校や高校に通ったことがあるならば、一度はこのような感覚を持った人も多いことでしょう。これらの訴えはじつは、生徒ではなく

先生からの訴えで、著者が、生徒からではなく先生自身の口から聞いたことを、紹介したものです。

 

 

部活動は制度の上では「自主的な活動」? 

 

 文部科学省が定める学習指導要領には、部活動は「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」と明記されています。

 

自主的な活動であるのに休めないとは、どういうことか? 自主的であるのに全員に強制されるとは、どういうことか?

 

教員においては、部活動に費やされる時間の大半は、時間外勤務です。教員は法制度上、時間外勤務が認められていないので、部活動指導は形式的には教員が自分の意志で好んでやっていることになっています。

  

部活動は「グレーゾーン」

 

 大学で教員免許を取得する際に、部活動の指導方法を学ぶ授業は、基本的には一つも用意されてはいません。部活動の事を専門的に学ぶことがないままに、日々の指導に当たっています。

 

なぜそうなるのかといえば、まさに部活動は「グレーゾーン」だからです。グレーゾーンであることがうやむやにされるとき、何が起きるか。その答えは制」「過熱」です。

 

ボールにさわったことがあればOK?

 

・教員は、まず部活動の顧問を強制的に担当させられ(全員顧問制度)、さらに自分にまったく馴染みのないスポーツや文化活動を割り当てられる可能性が高い。

 

日本体育協会の運動部活動に関する調査では、中学校で52.1%、高校で45.0%の教員が、担当する部活動について競技の「経験なし」と回答しています

 

入試における内申(調査書)に部活動が影響?

 

 ・基本的に調査書(内申)に生徒の悪口は書かれません。たとえば、「部活動をやめたから、忍耐力がない」というようなことは記載されません。その代わりに、「英検○級の取得など、英語の勉強に励んだ」といった前向きなことが記載されます。

 

スポーツ推薦をはじめ部活動の記録が特別視される入試形態を除けば、つまりスポーツで高校や大学への進学を考える場合を除けば、部活動が入試に占める比重は小さい。

 

スポーツ推薦等の特殊な場合を除いて、調査書に記載される可能性がある以上は「ゼロとは言い切れない」という程度の意味であり、調査書の記載事項を気にして部活動がやめられないというのは、調査書の影響力をかなり過大評価しています。

 

そうは言っても、これは一般論であり、いま入試に直面している生徒やその保護者は、担任や学校に必ず確認する必要があります。

 

生徒の部活動時間・最大は千葉県の1121/

 

 ・1週間(平日+土日)における活動時間数()の男女平均を算出し、都道府県別で上位5県と下位5県を下記の表にしました。男女平均では、千葉県の1121分が最長です。

 

 

全体 (男女平均)・スポーツ庁(平成28年度・調)

上位5県

千葉県

1121 ()

愛媛県

1117 ()

福岡県

1103 ()

奈良県

1098 ()

神奈川県

1065 ()

下位5県

富山県

823 ()

東京都

814 ()

広島県

775 ()

鳥取県

759 ()

岐阜県

650 ()

 

部活動の「総量規制」「ゆとり部活動」への転換

 

著者は、部活動改革の成否を握るのは、部活動の「総量規制」にあると考えています。この総量規制とは部活動の活動量を総合的に減らす取り組みを指します。一言で表すならば、「ゆとり部活動」の追求です。

 

「ゆとり」は、具体的には、「練習に充てる時間数や日数の削減」と「全国大会への不参加ならびに参加大会の精選」の2つの要素により達成されます。

 

部活動の未来展望図

 

・著者が考える部活動への未来展望図は、「過熱」し肥大化した部活動の活動量を「規制」しようという提案であり、部活動への参加を「強制」ではなく「自由」にするという目標とも連動しています。

 

「全員顧問制度」問題も、肥大化した部活動を総量規制により部活動の規模が現在の半分にまで縮減されたとき、明るい展望が開けてくるでしょう。 

 

 

 

目次

第一章

「グレーゾーン」を見える化する  

第二章

自主的だから過熱する - 盛り上がり、そして降りられなくなる 

第三章 

自主的なのに強制される - 矛盾に巻き込まれ、苦悩する 

第四章 

強いられる「全員顧問」の苦しみ 

第五章 

教員の働き方改革 - 無法地帯における長時間労働 

第六章 

素人が顧問 

第七章 

過剰な練習、事故、暴力 - 苦しむ生徒の姿 

第八章 

先生たちが立ち上がった! 

第九章 

未来展望図 - 「過熱」から「総量規制」へ 

座談会 

部活動のリアル

 

感想

 

ブラック企業やブラックバイトという言葉が使われ出したのはいつのころからかは定かではありませんが、ついに、ブラック部活動なる言葉までが・・・という感じです。

 

ブラック部活動と聞くと、指導を受ける生徒たちだけの問題と思っていたのですが、この本ではおもに先生たちの問題も深刻であると気づかされる内容でした。

 

まず、読んで驚いたのは、大学で教員免許を取得する際に、部活動の指導方法を学ぶ授業が、一つも用意されていないということです。

 

そして、教員において、部活動に費やされる時間の大半が、時間外勤務で、教員は法制度上、時間外勤務が認められていないので、部活動指導は形式的に教員が自分の意志で好んでやっていることになるそうです。

 

教員においては、授業やその準備だけでも忙しいのに、授業以外のいろいろな雑務もあり、とても時間的に余裕がないということもテレビで見たことがあります。

 

その上、部活動で時間が取られることになり、土日も活動している場合もあるので、とても大変であることが想像できます。

 

部活動自体は、とても有意義ですし、部活動で生徒たちが受けるメリットも多いはずです。たとえば、「集団で行動することによって、協調性が身につく」「体力や持続力、忍耐力がつく」「友人ができる」などが考えられます。

 

デメリットとしては、運動部の場合にはとくに、体力を消耗してしまい勉強に影響を与えてしまう。また、部活動で使用する用具などが高額の場合、金銭的な負担が大きい場合もあるでしょう。

 

そして、著者が考える先生たちの負担を減らすための解決策として、部活動の「総量規制・(部活動の活動量を総合的に減らすこと)」「ゆとり部活動・(練習に充てる時間数や日数の削減など)」の追求を行うこととしていますが、私もこの解決策に賛成です。

 

教員の部活動に割く時間と授業やそれらの準備に割く時間とのバランスが取れないようなら、部活動の時間を減らす方法を取らざるを得ないと思います。

 

いずれにしても、部活動は生徒にとっては学校教育において絶対に必要な活動であることには間違いないと思います。早く先生たちの労働環境が改善されて、ブラックと呼ばれる部活動が少しでも減ることに期待したいですね。